近年、美容医療や再生医療の現場で大きな注目を集めている「エクソソーム」という言葉を聞いたことはありますか?なかでも、歯の内部にある組織から採れる「歯髄(しずい)エクソソーム」は、数あるエクソソームの中でも特に高い効果が期待できるとして、最先端の治療やスキンケアに取り入れられています。

「名前は聞いたことがあるけれど、いったい何が良いの?」という方に向けて、その基礎知識から、神経の修復、そしてお肌の若返り(エイジングケア)への応用まで、分かりやすく3本のコラム形式で解説します。

アトラクレアビューティークリニック新宿について

当院では、脳神経外科医として長年培った精密な解剖学的知識と、最新の再生医療の知見を組み合わせ、患者さま一人ひとりに合わせた安全で質の高い治療をご提案しています。

項目詳細情報
クリニック名アトラクレアビューティークリニック新宿(Attracrea BEAUTY CLINIC Shinjuku)
院長佐藤 光(医学博士 / 元脳神経外科専門医)
所在地東京都渋谷区代々木2-7-5 EX-SIDE 南新宿6F
アクセスJR新宿駅 新南口 徒歩2分 / 新宿駅 A1出口 徒歩1分 / 小田急線 南口改札 徒歩2分
公式URLhttps://attracrea.jp/

 

歯髄エクソソームとは?他の成分と何が違うの?

エクソソームってなに?(細胞からの「メッセンジャー」)

私たちの体は、何兆もの細胞からできています。その細胞と細胞の間で「元気を出して」「ここを修復して」と指令を伝えるメッセンジャーの役割をしているのが「エクソソーム」という極小のカプセルです。中には、細胞を元気にするタンパク質や成長因子、遺伝情報の断片(miRNA)がぎっしり詰まっています 。

これまでの再生医療では「幹細胞そのもの」を移植することが主流でしたが、現在は、幹細胞が分泌するこのエクソソームの力だけを借りる「セルフリー(細胞を使わない)療法」が主流になりつつあります [1]。細胞を直接入れないため、アレルギーや拒絶反応のリスクを抑えられるのが大きなメリットです。

なぜ「歯髄(しずい)」由来が特別なの?

エクソソームは、脂肪や骨髄、そして歯の神経である「歯髄」など、さまざまな組織から採取されます 。中でも、乳歯や親知らずの歯髄から採れるエクソソームには、以下のような圧倒的な強みがあります。

もともとの役割が「神経や血管を作る」こと: 歯の神経は、胎児のころに「神経」や「脳」と同じグループ(外胚葉・神経堤)から育ちます。そのため、神経を修復するパワーが非常に高いのが特徴です 。

圧倒的な「若々しさ」: 乳歯などから採れる細胞は、年齢を重ねた脂肪や骨髄の細胞に比べて圧倒的に若く、元気な成分をたっぷり含んでいます 。

比較ポイント歯髄由来脂肪由来骨髄由来
得意分野神経の修復、高い抗炎症・エイジングケア [1, 3]ボリューム感の維持、創傷治癒骨や軟骨の修復
細胞の若さ非常に若い(乳歯などは特にピチピチ) [1]採取したドナーの年齢に左右される採取したドナーの年齢に左右される
身体への負担抜いた歯を使うため、体への負担が少ない [1]脂肪吸引などの処置が必要骨髄を採取する手術が必要

まとめ

歯髄エクソソームは、数ある由来の中でも「圧倒的な若さ」と「神経や組織を修復する高いポテンシャル」を持った、次世代のエイジングケア・再生医療の切り札です

 

歯髄エクソソームを用いた神経の再生医療|顔面神経麻痺へのアプローチ

 顔面神経麻痺と、これまでの課題

「ベル麻痺」や「ラムゼイ・ハント症候群」、あるいは怪我や手術などが原因で起こる末梢性顔面神経麻痺。急性期にはお薬の治療が行われますが、神経のダメージが大きく「軸索(神経の線維)」が傷ついてしまうと、時間が経ったあとに「目を閉じると口元が一緒に動いてしまう(病的共同運動)」や「顔の引きつれ・こわばり」といった後遺症に悩まされることが少なくありません。

「一度傷ついた神経はなかなか元に戻らない……」と諦めかけていた方に対し、新しい光となっているのが歯髄エクソソームを活用したアプローチです。

なぜ歯髄エクソソームが神経を元に戻せるの?

脳神経外科医として長年多くの神経や血管に触れてきた視点から見ても、歯髄エクソソームが持つ働きは非常に理にかなっています。主なメカニズムは以下の4つです。

  1. 神経細胞を保護するシュワン細胞の活性化: 神経を保護・修復する「シュワン細胞」がしっかり作用することで、シュワン細胞に包まれている神経の再生道筋を整えます 。
  2. 豊富な栄養(成長因子)を届ける: 神経の先端がグングン伸びるための栄養素(BDNFやGDNFなど)を直接届けます。
  3. 周りの血流を良くする: 神経のまわりの細かい血管を復活させ、酸欠状態から救い出します 。
  4. 無駄な炎症や傷あとを抑える: ダメージを受けた部分の「悪い炎症」をしずめ、神経の伸びを邪魔する硬い組織(線維化)ができるのを防ぎます 。
修復の流れ体の中で起きていること期待できる変化
1. 環境づくり炎症を鎮め、修復を邪魔する硬い組織をブロック [3, 5]痛みの軽減、血流の改善
2.シュワン細胞の活性化神経を包むシュワン細胞が元気になる [2]神経の通り道(ミエリン)が復活
3. 神経を伸ばす豊富な栄養(BDNFなど)で神経が成長 [1, 2, 3]神経の伝達スピードや表情の動きの回復

専門的な技術で「ピンポイント」に届ける

顔の神経は、耳の後ろあたりから顔全体へ向かって、まるで木の枝のように細かく広がっています。ただ液を塗るだけではなく神経の走行を正確に捉え、必要な場所にしっかり成分を届ける技術が大切になります。

 

歯髄エクソソームで肌が生まれ変わる?美容皮膚科の多層アプローチ

「表面を隠す」から「肌を根本から育てる」へ

大人の肌悩み(小ジワ、ハリのなさ、毛穴の開き、たるみなど)に対して、これまではヒアルロン酸で溝を埋めたり、表面を一時的に潤わせたりするケアが中心でした。

しかし近年の美容医療は、肌を構成している細胞そのものを呼び覚まし、自分の力でコラーゲンやエラスチンを作り出させる「バイオリモデリング(生体再構築)」の時代へシフトしています。その主役こそが、歯髄エクソソームです。

お顔の「5つの層」に合わせたアプローチ

年齢とともに顔が衰えていく原因は、表面の肌だけではありません。お顔は大きく分けて以下の「5つの層」で成り立っており、それぞれの層で老化が進んでいます。

  1. 第1層(表皮・真皮層): シワ、シミ、キメの乱れ、ハリ不足
  2. 第2層(皮下脂肪層): 脂肪の減少や下垂
  3. 第3層(SMAS筋膜層): 表情を支える筋膜のゆるみ
  4. 第4層(深層脂肪・靭帯): 顔全体を支える土台のボリュームロス
  5. 第5層(骨・骨膜): 骨の委縮による土台の変化

歯髄エクソソームのポテンシャルを最大限に引き出すためには、ただなんとなく肌に塗るのではなく、悩みに合わせて適切な深さに届けることが重要です。

お肌の層こんなお悩みにエクソソームの働きおすすめの施術方法
第1層(表皮・真皮)小ジワ、毛穴、ハリ・ツヤの低下コラーゲン・エラスチンの合成を高め、肌の生まれ変わりを促す [1, 4]メソセラピー、ニードルRF、専用のジェット噴流機器
第2層(皮下脂肪)肌全体のしぼみ、お疲れ感毛細血管を増やし、ふっくらとした健康的な肌環境に整える [4]マイクロカニューレ(細い管)での均一な注入
第3層(筋膜・筋肉)フェイスラインのゆるみ筋膜や細胞の弾力回復をサポートするシグナルを送る [2]HIFU(ハイフ)などの照射治療との組み合わせ

 

最新の機械(DDS)との組み合わせ

エクソソームは非常に小さなカプセルですが、健康な肌の表面(角質層)には強いバリアがあるため、ただ美容液のように塗るだけでは奥まで浸透しにくいという特徴があります。

そのため当院では、高圧のジェット噴流で肌に負担をかけず微細な通り道を作る機器(シナージェットなど)や、極細針を使った高周波(ニードルRF)など、成分を確実に奥へ届ける「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」を組み合わせて施術を行います。

 

参考文献(References)

  1. Chansaenroj J, Kornsuthisopon C, Chansaenroj A, Samaranayake LP, Fan Y, Osathanon T. Potential of Dental Pulp Stem Cell Exosomes: Unveiling miRNA-Driven Regenerative Mechanisms. Int Dent J. 2024. doi:10.1016/j.identj.2024.08.019.
  2. Zou J, Xia H, Jiang Q, et al. Exosomes derived from odontogenic stem cells: Its role in the dentin-pulp complex and neuroprotection. Regen Ther. 2023;24:135-146. doi:10.1016/j.reth.2023.05.008.
  3. Lan X, Sun Z, Chu C, Boltze J, Li S. Dental Pulp Stem Cells: An Attractive Alternative for Cell Therapy in Ischemic Stroke and Neural Regeneration. Front Neurol. 2019;10:824. doi:10.3389/fneur.2019.00824.
  4. Zhou Z, Zheng J, Lin D, Xu R, Chen Y, Hu X. Exosomes derived from dental pulp stem cells accelerate cutaneous wound healing by enhancing angiogenesis via the Cdc42/p38 MAPK pathway. Int J Mol Med. 2022;50(6):143. doi:10.3892/ijmm.2022.5199.
  5. Qiao X, Tang J, Dou L, et al. Dental Pulp Stem Cell-Derived Exosomes Regulate Anti-Inflammatory and Osteogenesis in Periodontal Ligament Stem Cells and Promote Tissue Repair via Macrophage Polarization. Int J Nanomedicine. 2023;18:4683-4703. doi:10.2147/IJN.S420967.

 

医療法・薬機法に基づく留意事項

※本コラムでご紹介した歯髄幹細胞由来エクソソームを用いた治療は、日本国内において医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を得ていない自由診療(保険適用外・全額自己負担)となります。

※治療にあたっては、医師による事前の十分なインフォームド・コンセント(適応の有無、期待される効果、内出血・腫れ・アレルギー等のリスク説明)が必要となります。効果や経過には個人差があります。